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2019年/アメリカ/97分
2020年日本公開
原題:The Peanut Butter Falcon
監督・脚本:タイラー・ニルソン/マイケル・シュワルツ
出演:シャイア・ラブーフ/ザック・コッサーゲン/ダコタ・ジョンソン/ブルース・ダーン/トーマス・ヘイデン・チャーチ
映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』ストーリー(あらすじ)
老人養護施設に収容されているダウン症の青年ザック(ザック・ゴッサーゲン)は、プロレスラーになる夢をかなえるべく施設を脱走。偶然出会った逃亡中の漁師タイラー(シャイア・ラブーフ)とともに、憧れのレスラー養成所を目指して旅をする。そんな彼らに、ザックを連れ戻しに来た施設の職員エレノア(ダコタ・ジョンソン)が追いついて…。
映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』レビュー(感想)
家族に見捨てられ、老人養護施設に入所しているザック。そこは彼にふさわしい場所ではない。ザックはダウン症ではあるけれど、老人ではない。
施設の職員エレノアは、とても仕事熱心だ。お年寄りたちの面倒をみるように、ザックの面倒もみようとする。彼女は、施設からの脱走を試みるザックを一生懸命に説得する。これ以上脱走を繰り返すと施設にいられなくなると。
青年には夢が必要だ(老人にも必要だ)。プロレスラーになりたい。それがザックの夢だ。そのために憧れのレスラーが主催する養成学校に入って、技を教えてもらいたい。施設にいれば安全に暮らしていくことはできるかもしれないが、夢に近づくことはできない。
ザックは脱走に成功し、漁師のタイラーに出会う。タイラーは人の獲物を盗む常習犯で、あげくに魚網の山に放火して逃亡中の身だ。やっていることはひどいが、彼は人生の真実は外さない。川を渡るシーンで、泳げないザックが「俺は死ぬのか?」と訊くと、「いつかはな。問題は死後にどんな物語を残せるかだ」と返すタイラー。家族に捨てられたダウン症の自分が目指すのは悪玉レスラーだと言うザックに、「人間の善悪は魂で決まる。お前は善玉だ。ダウン症は魂には関係ない」と励ますタイラー。この二つのシーンだけで、タイラーがものごとの本質だけを見ている人間だとわかる。ザックを連れ戻しに来たエレノアにタイラーは言う。「彼の将来を考えてやってるのか?」
ザックの脱走を手助けした老人(ブルース・ダーン。ローラ・ダーンの父ちゃん)のセリフ、「友達ってのは自分で選べる家族だ」もいい。マーク・トウェインの小説世界を彷彿とさせるような、自然と旅の時間のなかで育まれるザックとタイラーの友情。ザックを連れ戻しに来たはずなのに、旅を伴にするエレノア。人が生きるには夢や希望が必要だ。ザックにとってのいちばんの希望は、タイラーという友達とエレノアという理解者を得たことかもしれない。
☟映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』予告編