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映画『日日是好日』~「茶道」を通して、季節と人生の移ろいを描いた静かな感動作

ⓒ2018『日日是好日』製作委員会

2018年/日本/100分
監督・脚本:大森立嗣
原作:森下典子『日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)
出演:黒木華/樹木希林/多部未華子/鶴見辰吾/鶴田真由/郡山冬果/岡本智礼/山下美月

映画『日々是好日』ストーリー

大学生の典子(黒木華)は、将来何をしたらいいかわからず、どこか満たされない日々を送っていた。そんなとき母のすすめで、いとこの美智子(多部未華子)と一緒に、“只者じゃない” 武田先生(樹木希林)のところにお茶を習いに行くことになる。

映画『日日是好日』レビュー(感想)

いい意味で何も起こらない映画である。いや、就職、失恋、大切な人との別れなど、およそ誰の人生にも起こりそうなことはたしかに起こっているのだが、それでもこの映画の印象は「静謐」、静かで穏やかな映画である。

実際、茶室でのシーンが多く、そうしたシーンはセリフも少ない。見ているうちに、自分もその茶室の隅に座って、茶道の作法を学んでいる典子や美智子を眺めながら、息をひそめているような気分になってくる。

掛け軸に書かれた言葉、庭の草花、光の差し方。同じ空間であるはずなのに、武田先生の自宅の一室でもある「茶室」は、季節によって、そこにいる人々の心の在り方によって、様々な表情を見せる。

新たにやって来る人がいて、去っていく人がいる。季節が巡っていくように、人生の時間もまた移ろっていく。そのすべてを受け入れ、包み込むように、ただそこにある場所。

そんな空間のあることが、どれほど典子の励みとなり、支えとなったか。

傷心の典子が久しぶりにお茶のお稽古に顔を見せたとき、何気なくマンサクの花を眺めていた典子に、武田先生が声をかける。「『まず咲く』がなまって『まんさく』になったみたいね。一年のうちで、いちばん寒いときに咲く花もあるのねぇ」。花の名前の由来を語っているだけなのに、凍てついた典子の心が少しずつ溶けていく。

小さな気づきの積み重ねが生きることをこんなにも豊かにしてくれる。そんな発見が散りばめられた『日日是好日』は、ちょっと心がささくれだったとき、ただただ穏やかな時間を過ごしたいときにおすすめしたい映画です。

これまでマンサクの花なんて気にしたこともなかったけど、今度公園に行ったら探してみようかと思います。

☟映画『日々是好日』予告編

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