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2006年/アメリカ/PG12/100分
同年日本公開
原題:Little Miss Sunshine
監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
脚本:マイケル・アーント
出演:グレッグ・キニア/トニ・コレット/スティーブ・カレル/アラン・アーキン/ポール・ダノ/アビゲイル・ブレスリン
映画『リトル・ミス・サンシャイン』ストーリー(あらすじ)
7歳になるオリーブ(アビゲイル・ブレスリン)の家族は超個性的な面々ばかり。
大好きな祖父エドウィン(アラン・アーキン)はヘロイン中毒のエロじじいで、素行不良で老人ホームを追い出されているし、父リチャード(グレッグ・キニア)は人生の勝ち組になるべく、怪しげな自己啓発本を出版しようと必死だし、異父兄のドウェーン(ポール・ダノ)はパイロットになる夢のため、まったく喋らないという願掛けを実行中。
そこに、失恋、失職のダブルパンチで自殺未遂を起こしたゲイの叔父、フランク(スティーヴ・カレル)が転がり込んでくる。
すでに十分波瀾含みだが、なんと、ちょいブサ、ちょいデブのオリーブが全米美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」の地区代表に選ばれるという大波瀾が起こる。
一家はオリーブをコンテストに出場させるべくオンボロのバンに乗り込んで、一路カリフォルニアを目指すのだが…。
映画『リトル・ミス・サンシャイン』レビュー(感想)
家族とは、壊れた車を一生懸命に押して、皆でそれに飛び乗るがごとし…?
※以降、ストーリー展開およびラストシーンに触れています。
最初に断言しておく。(なにを?)この映画は、人生の哀しみとおかしみ、そして人生への励ましに満ちたシーンのオンパレードである。(いいじゃん!)
テストパイロットになるという願掛けのためにまったくしゃべらないドウェーンが、妹のコンテストに同行することを不承不承同意するシーンで、航空学校に行かせるという交換条件を出されて、黙って(握手のための)手を母親のシェリル(トニ・コレット)に差し出すところとか。
カリフォルニアに向かう車の中で、15歳のドウェーンに「大勢の女と寝ろ」と力説しまくる祖父エドウィンとか。
サービスエリアでエドウィンからポルノ雑誌を買ってくるよう頼まれ、快く引き受けたフランクが、失恋した相手(男)に偶然再会し、いかがわしい雑誌を買っているのを見られてしまうとか。
モーテルで、翌日のコンテストに不安を覚え、「負け犬はいや」と訴えるオリーブに向かって「負け犬の意味を知ってるか? 負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ」と励ますエドウィンとか。
エドウィンが救急搬送された病院の待合室で泣き崩れるシェリルを見て、メモで「ママをハグしろ」とオリーブに指令を出すドウェーンとか。
車のクラッチが壊れたり、リチャードの出版計画が頓挫したり、エドウィンが死んだり、車のクラクションが鳴りっぱなしになったり(そのせいで警官に止められたり)、パイロット志望のドウェーンの色弱が発覚したり(ドウェーンは、禁を破って声を上げて泣き叫ぶ)、ありとあらゆることが起こる。これでもか、これでもかと。この道行き自体が人生そのものなのだ。
受け付け時間ぎりぎりで会場のホテルに着いて、姪のオリーブのために、一目散にホテルに駆け込んでいくフランク。数分遅れただけで、係の女性は、頑としてオリーブのエントリーを認めようとしない。これも世間そのもの。
コンテストの待ち時間に、ホテルの近くの桟橋で、プルースト学者のフランクがドウェーンを励ます。プルーストは、職に就かず、報われない恋に生きたゲイだった。20年かけて1作を書いただけの負け犬だった。でも、いまはシェークスピアにならぶ大作家だと。プルーストは苦しんだ月日こそ、自分を形成した最良の日々だったと語っていると。
そして、なんとか出場が認められたオリーブがこの日のためにエドウィンに振り付けてもらっていたのはハレンチなセクシーダンスで、会場は大混乱に陥って…。
ラストは家路につくために、クラッチの壊れたバンを皆で押しながら、一人一人バンに飛び乗るシーンで終わる。まともに走ることもできないバンは、この家族そのものだ。そのバンを皆で押し、むりやりエンジンをかけて、皆で乗り込む。亡くなったエドウィンのように途中で降りる人もいる。これこそが家族であり、人生である。
うーーーん、ほんまによーできた話じゃのーと大いに感心していたら、そりゃそーじゃ、本作はアカデミー脚本賞を受賞している。アカデミー作品賞は逃したが、祖父役のアラン・アーキンがアカデミー助演男優賞を受賞しているのも、なんだかこの作品らしゅーて、えーね!