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2003年/アイルランド/106分
同年日本公開
原題:IN AMERICA
監督・脚本・製作:ジム・シェリダン
脚本:ナオミ・シェリダン/カーステン・シェリダン
出演:サマンサ・モートン/パディ・コンシダイン/ジャイモン・フンスー/サラ・ボルジャー/エマ・ボルジャー
映画『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』ストーリー(あらすじ)
アイルランドからニューヨークにやって来たサリヴァン一家は、個性豊かな(というか、ちょっと危ない)住人の多い、古びたアパートで生活を始める。
役者志望の夫ジョニー(パディ・コンシダイン)は、タクシー運転手をしながらオーディションに精を出し、教師の職が見つからなかった妻のサラ(サマンサ・モートン)はアイスクリーム屋で働き始める。
ジョニーとサラの幼い娘たち、クリスティ(サラ・ボルジャー)とアリエル(エマ・ボルジャー)も近隣住民と交流を重ねるなかでアメリカでの生活に馴染んでいく。
とくに下の階に住む黒人マテオ(ジャイモン・フンスー)は、見た目は恐いが心優しきアーティスト(画家志望)で、不治の病を抱える彼と、サリヴァン一家は少しずつつながりを深めていく。
ジョニーはなかなか役者として芽が出ず、一家は苦しい生活が続くが、クリスティはここぞというときに、アメリカに来る前に死んでしまった弟、フランキーに願いごとをするのだった。願いごとは三つまで、それがフランキーとの約束だった…。
映画『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』レビュー(感想)
家族の幸せを願う幼い姉妹の心情が胸を打つ。劇中歌「デスペラード」は映画史に残る名シーン
※以降では、ラストシーンにも触れています。
アイルランドから希望の国アメリカのニューヨークへと移住してきたサリヴァン一家だが、新天地へとやって来たにもかかわらず、家族の表情はどこか虚ろだ。一家の宝物だった末弟のフランキーを亡くした悲しみが癒えていないのだ。
本作は、大切な家族を失った一家の再出発と再生の物語だ。本作の語り手である姉妹の姉クリスティを演じたサラ・ボルジャー、妹アリエルを演じたエマ・ボルジャーは本当の姉妹である。
この姉妹がもうかわいくてかわいくて、とくに妹のアリエルは“天使”そのものである。この姉妹が動きまわる姿を見るだけでも、脳内に幸せホルモンが分泌されること間違いなしといえよう。
そして圧巻は、姉クリスティが歌う「デスペラード」。言わずと知れたイーグルスの名曲である。数えきれないほどのアーティストにカバーされており、リンダ・ロンシュタットやカーペンターズなど、いくつもの名カバーも生まれたが、こんなにも胸に迫る「デスペラード」はほかに聞いたことがない。映画史上もっとも美しい劇中歌といっても過言ではなく、このシーンだけでも本作は名画たりえている。
クセの強い隣人マテオとサリヴァン家の交流も本作の大きな柱になっている。マテオからの思いがけないプレゼントは一家の窮地を救ってくれることになるのだが、それが何かはここでは触れないでおきたい。マテオを演じたジャイモン・フンスーはこの作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされている。
ついでに書いておくと、この作品でやはりアカデミー賞(主演女優賞)にノミネートされた、サマンサ・モートン演じるサラが新しい命を授かるシーン(夫婦の営みでございます♡)は、とくに過激というわけではないのだが、けっこうエッチでございますので、そちらも見どころかと、はい。
新しい家族の誕生を祝うパーティの夜、皆が帰ったあと、ジョニーと娘たちは、ベランダで月を見ながら、病気で亡くなったマテオに別れを告げる。
そしてこのとき、クリスティは、三つ目の願いごとをする。それは家族が生まれ変わるための願いごとであり、その願いごとそれ自体が、フランキーの死が、どれほど深い悲しみを家族にもたらしていたのかを教えてくれる。
名作を表現するのに、よく「珠玉の」という言葉が冠されることがある。この記事の見出しもそうなっているが、ジム・シェリダン監督の自伝的ストーリーであり、娘たちとともに脚本を練り上げたという本作は、家族の絆によって紡ぎ出された、それだけに魂のこもった、まさに「珠玉」と呼ぶにふさわしい作品になっている。
映画『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』を名作に押し上げた
名曲「デスペラード」についての記事はこちら
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参考イーグルスの名曲「デスペラード」の歌詞は、誰が誰に向かって語りかけているのか
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