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2002年/アメリカ/123分
同年日本公開
原題:Frida
監督:ジュリー・テイモア
製作:サルマ・ハエックほか
出演:サルマ・ハエック/アルフレッド・モリーナ/アントニオ・バンデラス/アシュレイ・ジャド/エドワード・ノートン/ジェフリー・ラッシュ
映画『フリーダ』ストーリー(あらすじ)
画家志望の少女フリーダ・カーロ(サルマ・ハエック)は、通学のバスが路面電車と激突する事故によって瀕死の重傷を負う。病床にあって、さらに絵にのめり込むようになったフリーダは、有名な壁画作家ディエゴ・リベラ(アルフレッド・モリーナ)に、自分の絵を見てもらう。それをきっかけにフリーダは20歳も年上のディエゴと結婚。実の妹と不倫されるなど、ディエゴの女癖のわるさに悩まされたり、政治活動に手を染めたり、男女を問わず自身も浮気を繰り返すなど、事故の後遺症に苦しみながらも、濃密で目まぐるしい日々を送るなかで、画家としての名声は一気に高まっていくのだった。
映画『フリーダ』レビュー(感想)
芸術家として、男と女として、生を謳歌した人間どうしの情熱の物語
※以降、ラストシーンに触れています。
冒頭に映し出されるフリーダの生家、青い家(現在はフリーダ・カーロ記念館)のシーンに象徴されるように、本作は色彩の鮮やかな映画である。青やオレンジなど、フリーダを生んだメキシコの乾いた空気を感じさせるような、フリーダの絵画そのもののような色使いが、本作のそこかしこに印象的に散りばめられている。
そして、絵画から実写へ、実写から絵画へと、映像のマジックが楽しめるのも、本作の見どころとなっている。その絵画とは、もちろんフリーダの描いた絵なのだが、フリーダをはじめとする絵の中の人物と、演じている役者たちがそっくりなことに驚かされる。
それもそのはずで、本作に登場するフリーダの作品(ディエゴの壁画も)は、プロジェクトチームによる複製らしいのだ。フリーダの作品を緻密に再現しつつ、その顔やポーズを実際の役者に微妙に近づけているようなのだ。本作中に登場する絵と、実際にフリーダが描いた絵を比べてみると、複製チームの絶妙な仕事ぶりに感嘆せずにはいられないはずだ。
ディエゴとフリーダが共産主義者のパーティに行ったり、ディエゴがロックフェラー(エドワード・ノートン)に依頼された壁画にレーニンを描きこんだり、亡命してきたトロツキーを匿ったりと、本作には政治的な要素がずいぶんと盛り込まれているが、それは本筋ではない。
それらはフリーダとディエゴが生きた20世紀半ばにかけての時代状況、政治状況を鑑みれば、避けては通れない時代背景だったというにすぎない。本作を貫くメインストーリーは、存分に生を謳歌した女と男の情熱の物語だと思う。
ラストシーンは、天蓋に骸骨をのせたベッドが燃えだし、そこに横たわるフリーダが微笑んだあと、実写映像が絵に変わって終わる。その絵はフリーダが描いた「夢」という作品とほぼ同じ構図だが、実際の「夢」には、映画の絵にある炎は描かれていない。この炎は、人生を燃やし尽くしたフリーダに対するジュリー・テイモア監督からの讃歌なのかもしれない。
フリーダが残した日記には、最後にこう記されていたという。「喜びに満ちた出口」。
結論。眉毛の濃い女は情も濃い。