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2016年/アメリカ/99分
2017年日本公開
原題:A DOG’S PURPOSE
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:W・ブルース・キャメロンほか
出演:デニス・クエイド/ペギー・リプトン/ブライス・カイザー/K・J・アパ/ブリット・ロバートソン/ベイリー/エリー/ティノ/バディ
映画『僕のワンダフル・ライフ』ストーリー(あらすじ)
死にかけたところをイーサン(ブライス・カイザー)に助けてもらった犬のベイリーは、イーサンから絶対に離れないと心に決める。その願いもむなしく、命が尽きて死んでしまったベイリーは、その後、さまざまな犬に転生を繰り返す。新たな飼い主のもとで、新たな人生(犬生)をせいいっぱい全うするベイリーだったが、その心の奥底にはいつもイーサンの存在があった。
映画『僕のワンダフル・ライフ』レビュー(感想)
犬という存在の愛らしさ、健気さ、いじらしさが、溢れかえっている映画です。そして哀しさも。
犬を飼ったことがある人、いま飼っている人が本作を見ると、登場するベイリーという犬に、自身の愛犬のことを重ねずにはいられないでしょう。
私もかつて飼っていた犬を思い出しました。シェットランドシープドッグという犬種でした。父の職場にブリーダーをやっている方がいて、片キン(オス犬のタマタマが片方しかないこと。うちに来てしばらくして、めでたく2個タマになりました)の子を譲ってもらったのです。
食い意地がはっている。テーブルのお皿に盛り付けられた夕飯のおかずを一瞬で平らげて、知らん顔を決め込む。ごはんの内容が気に入らないと、鼻先でお皿ごとひっくり返す。サッカーボールを自分で転がしておいて、飛びついて遊ぶのが大好き(胸元の白い毛は、よだれと泥がこびりついて、いつも妙な灰色に)。野球ボールを追いかけるのも好きだが、途中までしか咥えて持ってこない。散歩のリードを手に取ると、何度もジャンプして大喜びする。散歩を終えて家に帰ろうとすると、「もっと散歩したい!」と、脚を踏ん張ったり、道に寝っ転がったり。散歩の途中で逃げ出して、名前を呼びながら近所を探し回っていると、「ボクはもうとっくに帰ってるよ」とばかりに、自宅から吠えて知らせてきたことも。突然はっちゃけて、すごいスピードで走り回る。呼んでもときどき無視をする。雷や花火を怖がる。ブラッシングが大嫌い。しっぽをブンブンと振り回して、全身でよろこびを表現する。ぺろぺろと顔をなめ、嫌がるとさらにしつこくなめてくる。チャンピオン犬の血を引いているとかで、一度だけ品評会に連れていくも、堂々たるブービー賞。
こうして書き連ねてみると、まあまあなダメ犬という気がしなくもないですが、だからこそ、なおさら愛しいというか、ちょっと臆病だけれど、ひょうきんでやさしい、かわいいやつでした。
本作のベイリーもそうですが、犬というのは、自分の群れのメンバー、つまり、人間のことを本当によく見ています。と、えらそうに書きましたが、この映画を見て、あらためてそのことに気づかされました。
うちの犬も、彼なりに、一生懸命に家族のことを見ていてくれた、家族に向き合ってくれていたんだろうと思います。
その健気さ、いじらしさに飼い主として十分に応えられていたかというと、とてもそうは思えません。犬のしあわせは、よくもわるくも飼い主しだい。ああしてやればよかった、こうしてやればよかったと、いまでも、とくにこのような映画を見ると、後悔ばかりが押し寄せてきます。
「犬を飼うことは、少年に与えられた最大のよろこびのひとつ」と言ったのは誰だったか(チャーリー・ブラウン?)。少年にかぎらず、犬と暮らすことは本当に大きなよろこびをもたらしてくれます。
でも、その大きな幸福の裏側には、同じくらい大きな哀しみが張り付いています。犬の寿命は人間よりはるかに短いからです。
何度生まれ変わってもイーサンのことを決して忘れないベイリー。そんなこともあるかもしれないと、半ば本気で思ってしまうのは、犬を撮らせたらこの人の右にも左にも出る者がいない、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や『HACHI約束の犬』のラッセ・ハルストレム監督の演出力によるところ大ですが、そう信じたい気持ちがどこかにあるのも確か。
ふとすれ違った散歩中の犬が、私の膝のあたりに鼻先でチョンと触れていったのは、もしかしてかつての愛犬の生まれ変わり!? と勝手に想像して、勝手に慰められたような気分になったのも、この映画を(これで三度も)見たせいだと思われます。
☟映画『僕のワンダフル・ライフ』予告編