日々のこと

きれいな本を買いたくて、平積みの本を下から取ってしまう件

書店に平積みされた新刊書

書店で単行本や雑誌を買うとき、どうしてますか?

雑誌はだいたい平積みにされていますし、単行本も新刊は平積みになっていることが多いですよね。さて、お目当ての雑誌や単行本が見つかって、いざ購入となったとき、どうしてますか?

一番上にのっている雑誌や単行本をすっと手に取って、さっとレジに持っていけば、ひじょうにシンプルかつスマートな行動ですが、私にはこれができません。

一番上にのっている本は、傷んでいることが多いから。せっかく本を買うのなら、きれいな状態の本を買いたいから。

新しい雑誌のページを開いたときのパリっとした感じ。誰にも読まれたことのない単行本のページとページが離れるとき、ピリリンという音が聞こえてきそうなくらいに、密着している感じ。

真新しい本のページをめくるとき、まだ誰も歩いていない雪景色の上に足を踏み入れるかのような、買ったばかりの洋服に袖を通すときのような、新築のアパートに入居できたときのような(?)、アーム・ストロング船長が人類にとっての大きな一歩を月の上に刻んだときのような(??)、そんなよろこびを感じるのです。

ところが、一番上にのっかっている本は、どれどれといろんな人の手に取られ、パラパラとめくられがち。ページからはパリッと感がほぼ消失しているし、表紙やカバーもよれっとしていることが少なくない。

そこで、上から3~4番め、もしくは5~6番目にある本を引き抜くことになるのです(複数の人が同時に手に取ることがあるからか、2番めあたりだと、ちょっと傷んでいる場合もあるので)。

これで終わればまぁ、許容の範囲かもしれません。問題はあいだから引き抜いた本が、なぜか汚れていたり、傷んでいたりする場合です。あいだから抜いたのならそれはなかろうとお思いでしょうが、たまにそういうこともあるのです(特定の本が傷まないよう、書店の側の防衛策なのか、新しい本を補充する際に、単純に上にのっけた結果、傷んだ本が下にいってしまうのか…?)。

だから、あいだから取った本で「よしっ」とならなかった場合、その本をいったん戻し、あいだから引き抜く作業をもう一度繰り返すことになってしまう(地獄の三度は避けたいところ)のですが、これが恥ずかしい。

もし、その様子を人に見られていたら、「まぁ、一度ならず二度までも! こまかい人ね、ほんとキライ!」「神経質な人ね、ほんとキライ!」「小さい人間ね、ほんとキライ!」などと思われかねません。

実際、こまかくて、神経質で、小さい人間なんです。人に見られることで、自分が、こまかくて、神経質で、小さい人間であることを、あらためて突き付けられるようで、それもつらいんです。

それゆえ、欲しい本の周囲に人がいないときを見計らって、できるだけ迅速に一連の作業(あいだから引き抜く→その本がきれいであることを確認)を済ませ、合格した本を手にして、レジへと向かうことになります。

“人がいないときを見計らって”と書きましたが、これがなかなかむずかしい。なぜか目的の本の近くには人がいることが多い。近くならまだいいが、目的の本の真ん前にいることもある。それどころか、目的の本を手に取ってページをめくっていたりする。

こうなると一旦、退却せざるをえません。別のコーナーに行って、さして興味もない本を手に取ってみたり、書店内を意味なくうろついてみたり。しばらくして突撃ポイントに戻ってみると……いる! しかたがないからまた店内回遊→また戻る→まだいる!「そんなに興味があるなら、もうその本買ったらどうですか」と口に出せるはずもなく、また店内回遊……のような事態がしばしば起こりがちです(よね?)。

どうにかこうにか人目を避けて、ようやく目当ての本をゲットしても、レジに向かいながら「おいおい、自分さえきれいな本を買えればいいのか? たまたま上に置かれてしまった本の立場はどうなる? それって地球に優しい行動なのか?」などという心の声まで聞こえてきてしまうのです。

ことほどさように、本を買うだけでもうへとへと。ぐったりしながら書店を出ることになってしまいます。

ネットで本を買うこともあるのですが、この場合はあきらめがつきやすい。送られてくるものをおとなしく押し戴くだけです。だいたいきれいな本が送られてきますし(一度だけ――梱包するときに乱暴に押し込んだのか――帯が外れてぐちゃぐちゃになっていたことがありましたが、それも黙って拝領しました)。

しかし、出版不況が叫ばれ、書店の減少が伝えられるなか、ネットでばかり買っていると、まだがんばっている街の本屋さんがますます苦境に立たされてしまうことにもなりかねません。

地元の書店がなくなってしまったら、やっぱり困る。ふらっと立ち寄ってその場で買える、新刊コーナーで最近出た本を一望できたり、書棚を見ているうちに思いがけない発見をしたり、リアル書店ならではの良さはやはり捨てがたいものがあります。

だから、できるだけ本屋さんで買いたいと思ってはいるんです。

書店の場合は、なまじ現物がそこにあるだけに、「同じお金を払うのなら、きれいなものが欲しい」となってしまうのは致し方ない面もありますよね?(ね?ね?ね?)

ただ、あまりにそこにこだわって、本をとっかえひっかえするのは、かっこわるいし、くたびれてしまう。

そこで、マイルールとでもいうのか、本を一度あいだから引き抜いたらそれで終了。引き抜いた本を仔細に見ることはせず、さっさとレジに持っていく、という行動を心がけるようにしています(と言いながら、たまに二度抜きしている)。

ある種、賭け(大げさ)ですが、こんなふうに決めておけば、人様に見苦しい姿を(それほど)さらすことにはならないだろうし、なにより、こまかくて神経質で小さい自分と(それほど)向き合わなくてもすみます。

引き抜きが一度だけなら、人に見られてもまぁ許される範囲だろうと思わなくもないのですが、それでもやっぱり、タイミングを見計らって店内を回遊しがちなのは相変わらずです。

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