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映画『スウィート17モンスター』~おかしくて、切なくて、少し泣ける。17歳女子、スウィートはちょっとで思い切りビターな青春

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2016年/アメリカ/PG12/104分
2017年日本公開
原題:The EDGE of Seventeen
監督・脚本:ケリー・フレモン・クレイグ
製作:ジェームズ・L・ブルックス/ジュリー・アンセル
出演:ヘイリー・スタインフェルド/ウディ・ハレルソン/ヘイリー・ルー・リチャードソン/ブレイク・ジェナー

映画『スウィート17モンスター』ストーリー(あらすじ)

幼い頃から出来のいい兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)と自分をくらべて、強いコンプレックスを抱いてきたネイディーン(ヘンリー・スタインフェルド)。彼女の心の拠り所は優しい父親と親友のクリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)だった。
ところが、ネイディーンが中学生の頃、父親が急死。17歳になったネイディーンは自分に自信が持てず、相変わらず鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日、ネイディーンはダリアンとクリスタがベッドにいるのを目撃する。たったひとりの友人を兄に取られてしまったと絶望したネイディーンはクリスタに絶交を言い渡してしまう。ヤケになったネイディーンは以前から思いを寄せていた相手にアプローチするが…。

映画『スウィート17モンスター』レビュー(感想)

ヘイリー・スタインフェルドが多感な17歳を熱演

本作には『愛と追憶の日々』(1983年)や『恋愛小説家』(1997年)で脚本・監督・プロデューサーを務めたジェームズ・L・ブルックスがプロデューサーとして名を連ねている。“人間ドラマの巨匠”(と勝手に呼ばせていただいている)ジェームズ・L・ブルックスが関わっているというだけでも、この映画に対する期待はいやがうえにも高まろうというもの。

主役のネイディーンを演じるのはヘイリー・スタインフェルド。ジェフ・ブリッジスが主演した異色の西部劇『トゥルー・グリッド』で注目を集め、その後も『エンダーのゲーム』や『はじまりのうた』などの話題作に出演してきた新進女優。本作のあとにも『トランスフォーマー』シリーズのスピンオフ作品である『バンブルビー』などに主演している。

本作の撮影時にヘイリーは18歳。実年齢に近い17歳の役をまさにハツラツと演じている。どんぐりまなこにゲジゲジまゆげ、個性的な可愛らしさのある彼女の風貌も青春をこじらせている女子高生ネイディーン役にぴったりである。

ほかの映画では見られない、そこはかとなくいい人役のウディ・ハレルソン

ネイディーンは落ち込んだり、困ったことが起こるたびに担任教師のブルーナーに気持ちを吐露しに行くのだが、このブルーナーを演じているのがウディ・ハレルソン。

『スリー・ビルボード』(2017年)の保安官役でもそうだったが、ウディ・ハレルソンは“何を考えているのかわからない”“いかつい”“怖い”“寡黙”といった役どころが多い。本作の教師ブルーナーも決して饒舌な男ではないのだが、なんとも温かい、味のある先生なのだ。

映画の冒頭、「これから自殺する」と告げに来たネイディーンに、実は自分も遺書を書いていたところだとブルーナー。唯一の安らぎの時間である昼休みをしょっちゅう奇抜な服の生徒(ネイディーンのこと)に邪魔されるのがつらいと即興で遺書を読み上げる。

片思いの相手に「口でしてあげる。私の中に入ってほしい」という妄想メールを誤送信してしまったと取り乱すネイディーンには、フローズン・ヨーグルトを食べるようにアドバイスするブルーナー。

ブルーナーはネイディーンに簡単に共感したり、なぐさめたりはしない。いつもちょっと距離を置き、はぐらかしたり、とぼけた返答をすることで、“たいしたことない”“大丈夫だ”というメッセージをさりげなく伝えているかのようだ。

一見頼りにならないようでいて、ネイディーンが本当に困ったときには、自身の自宅へ連れて帰り、家族とともにさりげなくネイディーンを受け入れる。よけいなことは一切言わないのに、そこはかとない優しさが伝わってくる。

このブルーナー役に見事にハマっているウディ・ハレルソン。ほかの映画とは一味も二味も違うウディ・ハレルソンを堪能できるのも本作の大きな見どころといえるだろう。

主演のヘイリー・スタインフェルドのコメディエンヌっぷりも瑞々しい、青春映画の傑作!

☟映画『スウィート17モンスター』予告編

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