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2015年/アメリカ/98分
2017年日本公開
原題:Maggie’s Plan
監督・脚本:レベッカ・ミラー
製作:レベッカ・ミラーほか
出演:グレタ・ガーウィグ/イーサン・ホーク/ジュリアン・ムーア/ビル・ヘイダー/マーヤ・ルドルフ/トラヴィス・フィメル/ウォーレス・ショーン
映画『マギーズ・プラン』ストーリー(あらすじ)
大学でアート系学生のキャリア支援の仕事をしているマギー(グレタ・ガーウィグ)。恋人と長続きせず、結婚はあきらめていたが、学生時代の友人ガイ(トラヴィス・フィメル)から精子提供を受けて出産しようと計画していた。
そんな頃、同じ大学の非常勤講師で小説家志望のジョン(イーサン・ホーク)と恋に落ち、不倫の末に結婚して娘のリリーも誕生。しかし数年後、家事を全部おしつけられ、結婚の現実に直面してジョンに失望したマギーは、ジョンの元嫁ジョーゼット(ジュリアン・ムーア)に「彼とやり直さない?」と持ちかける。
映画『マギーズ・プラン』レビュー(感想)
主人公マギーの人物造形にブレがないのは、脚本・監督のレベッカ・ミラーが、『セールスマンの死』で有名な劇作家アーサー・ミラーの娘だからでしょうか。自分の頑張りを父親のDNAの手柄にされたらレベッカ・ミラー監督は納得がいかないかもしれませんが、なにか理由を求めたくなるくらい、マギーの人物像はしっかりとつくり込まれていました。
そのマギーはどんな人物か。勝手にまとめさせていただくと、「人生のハンドルに遊びがない人」です。
誰と付き合っても半年と続かないから、結婚は無理。だけど子どもは欲しいから、精子を提供してもらって出産しようとするマギー。学生時代の元彼トニー(ビル・ヘイダー)に「それって49歳の女がやることじゃ?」と言われて、「ぎりぎりで焦りたくないの」と返すマギー(マギーはたぶん30歳くらい)。
不倫して略奪婚、子どもも生まれたものの、亭主ジョンに愛想をつかして元嫁ジョーゼットに返そうとするマギー。ジョーゼットに「不倫したあげく、飽きたってわけね。罪悪感から逃れたくて無理やりハッピーエンドにもってくつもり?」とつっこまれるマギー。
運転される方はおわかりかと思いますが、自動車のハンドルはちょっと回したからといって、すぐに反応するわけではありません。 ハンドル操作とタイヤの動きに“遊び”と呼ばれるゆとりを設けることで、車が急回転したり、右に左にフラフラと蛇行したりするのを防いでいるのですね。
ところが、マギーの“人生のハンドル”には遊びがありません。結婚が無理だとなったら精子提供で出産を計画、夫がいらなくなったら元嫁に返却を計画と、とにかくやることが極端。人生の急ハンドルを切りまくりなのです。
元彼トニーは「なぜ普通に別れない?」「愛は理屈じゃない。ムダなことばっかりさ。とっ散らかってて当然なんだ」「君はきれいに事をおさめたがる」とマギーをたしなめます。そしてトニーが放った「君は善意の人だ。正しいことをしようとして、必ずヘマをやる」というセリフにマギーという人物が集約されています。「必ずヘマをやる」のは急ハンドルを切るから。無謀な運転をすれば事故が起こるのです。
ジョンの元妻ジョーゼットでさえも、「あなたはヘンな人ね。どこか純粋で、ちょっとバカ。無邪気っていうか、損得がないのね。あなたのこと好きだわ」と言うくらい、マギーは邪心のない人物です。でも悪気がないからといって、何をやってもいいわけではありません。人は皆、後戻りのできない、人生という名のハイウェーを一生懸命疾走しているのです。そこで好き勝手に急ハンドルを切られた日には、周りの人はたまったものではありません。亭主を略奪されたジョーゼットも、返品されようとしているジョンも、完全にもらい事故です。
マギーは愛すべき人物ではありますが、できればこういう人とは関わり合いにならずにいたいものです。そう思っていても、この手の人は向こうから勝手に近づいてきて、さんざん人の進路を妨害したり、ときには事故に巻き込んで、知らん顔して去っていくのです。それも人生の一部と言ってしまえば、そうかもしれませんが、だからって巻き込まれた側は納得できるものではありません。
ラストシーンは、ある登場人物がこれからマギーとより深く関わっていくであろうことを予感させる終わり方になっていました。どうかよいめぐり逢いでありますように。マギーが今度は人生の急ハンドルを切らないことを祈ります。
はた迷惑だけど、素朴さもあって、かわいいマギーにグレタ・ガーウィグははまり役だったし、優柔不断なインテリ亭主のイーサン・ホーク、出世に邁進する大学教授にして元妻のジュリアン・ムーアもぴったりの役どころでした。映画自体はとても楽しめたことを言い添えておきたいと思います。はい。
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