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2015年/アメリカ/PG12/101分
2017年日本公開
原題:Demolition
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
脚本:ブライアン・サイプ
出演:ジェイク・ギレンホール/ナオミ・ワッツ/クリス・クーパー/ジュダ・ルイス/ヘザー・リンド
映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』ストーリー(あらすじ)
デイヴィス(ジェイク・ギレンホール)は、妻ジュリア(ヘザー・リンド)の父親フィル(クリス・クーパー)が経営する投資会社に勤めている。ある日、ジュリアが運転する車で交通事故に遭い、同乗していたデイヴィスは助かり、ジュリアだけが亡くなってしまう。周囲の心配をよそに、すぐに仕事に復帰したデイヴィスだったが、しだいに奇異な行動が目立ちはじめる。
映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』レビュー(感想)
※ストーリー展開に触れています。
妻の死を、深く悲しむ男の話。その悲しみを本人が自覚するまでの時間の物語。それが本作だ。
デイヴィスは、通勤の電車で毎朝会う男に告白する。「妻を愛してなかった」「彼女が死んだのにつらくも何ともない」。男に「どんな気分だ」と訊かれたデイヴィスは列車の緊急停止レバーを引く。
妻が亡くなった直後の病院。デイヴィスは自販機でm&mチョコレートを買おうとするが、チョコは自販機から出てこない。デイヴィスは自販機会社に抗議の手紙を書く。その手紙に、妻が死んだことや、妻とのなれそめまで書く。しかも手紙は1通で終わらない。妻のこと、仕事のこと、およそクレームの手紙にはふさわしくないことを綴っていく。ふむふむふむ。つまりこれは、変人が妻を亡くした話ってことなのか。
デイヴィスは冷蔵庫の修理にとりかかる。亡くなる直前の妻から修理を頼まれていたのだ。そして冷蔵庫をバラバラに分解して壊してしまう。デイヴィスはありとあらゆるものを分解しはじめる。まるで義父フィルに言われた言葉「まず分解しろ。そして見極めろ」「心の修理は車の修理と同じだ。まず隅々まで点検する。そして組み立て直す」を実践するかのように。エスプレッソマシーン、パソコン、フィルの家の照明、会社のトイレの個室まで、デイヴィスは自分の心を分解するかのように、あらゆるものを分解していく。それらは組み立て直されることはなく、分解されたまま放置される。
様子のおかしいデイヴィスをフィルは心配し、しばらく仕事を休むようにすすめる。デイヴィスの“分解への欲求”は止まらず、ついには解体工事の現場で働きはじめる。
そんな、妻を亡くした変わり者の物語のサイドストーリーが、自販機会社のクレーム担当カレンと、その息子クリスによって紡がれる。クレームの手紙を寄越したデイヴィスに真夜中に電話をかけてくるカレンもかなりなものだが、12歳で停学中のクリスもなかなかにこじらせている。変わり者は変わり者どうしということなのか、彼らとの交流により、どこへ飛んでいくかわからなかったデイヴィスの心が、かろうじて繋ぎ止められる。
とくにクリスに関わることが、結果的にデイヴィスの心のバランスに寄与する。たとえばクリスに自分はゲイだろうかと相談されるシーン。どうやらゲイだとなったとき、「あと2、3年は女の子が好きなフリをしろ。その後、マンハッタンかサンフランシスコかLAに越せ」というデイヴィスのアドバイスはかなり実際的だ。好き勝手に振る舞っていた猫のところに、面倒をみなきゃいけない子猫がやって来たら、もといた猫がちょっとまともになったというのに似ている気もする。
ラスト近く、彼をとっくに見放していたフィルを呼び出すデイヴィス。そこでデイヴィスがフィルに告げた言葉で、この映画は、変わり者の話から、妻の死を悼む男の話になった。
悲しみは心の深いところにあった。それを見つけたデイヴィスはやっと次の一歩を踏み出すことができたのだ。
本作は一度だけ見るより、もう一度見たほうがよい。最初は、いくらなんでもと思われたデイヴィスの行動の数々が、二度目は腑に落ちる。原題は「Demolition(破壊)」だが、物語はそのタイトルにふさわしくないほど、かなり周到に組み立てられている。その周到さが嫌味になりかねないところを、妻ジュリアンがメモに残した「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」という言葉(邦題はここから)のわかりにくさ加減が救っている気もする。
☟映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』予告編