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2003年/アメリカ/128分
2004年日本公開
原題:Something's Gotta Give
監督・脚本・製作:ナンシー・メイヤーズ
製作:ブルース・A・ブロック
出演:ジャック・ニコルソン/ダイアン・キートン/キアヌ・リーブス/フランシス・マクドーマンド/アマンダ・ピート
映画『恋愛適齢期』ストーリー(あらすじ)
レコード会社のやり手経営者ハリー・サンボーン(ジャック・ニコルソン)は、娘ほども歳の離れた恋人マリン(アマンダ・ピート)とともに、彼女の母エリカ(ダイアン・キートン)の海辺の別荘を訪れるが、そこでエリカとその妹ゾーイ(フランシス・マクドーマンド)と鉢合わせる。人気劇作家のエリカは新作を仕上げるために別荘にやって来たのだった。
ハリーとエリカたちは週末を一緒に過ごすことになるが、ハリーが心臓発作を起こしてしまう。病院に担ぎ込まれて事なきを得たハリーだったが、体力が戻るまでエリカの別荘に滞在することになる。
傍若無人なハリーを最初は毛嫌いしていたエリカだったが、ともに過ごすうちに、しだいに彼に興味を抱きはじめる。
二人の距離が少しずつ縮まる一方で、エリカはハリーの担当医で年若いジュリアン(キアヌ・リーブス)から熱烈なアプローチを受けて…。
映画『恋愛適齢期』レビュー(感想)
酸いも甘いも嚙み分けた大人の男女の可愛げ対決
製作・監督・脚本のナンシー・メイヤーズは、キャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレットの共演が話題を呼んだ『ホリデイ』(製作・監督・脚本、2006年)や、ロバート・デニーロとアン・ハサウェイが共演した『マイ・インターン』(製作・監督・脚本、2015年)、『赤ちゃんはトップレディがお好き』(製作・脚本、1987年)など、コメディタッチの人間ドラマを得意としていて、本作でもその手腕を遺憾なく発揮している。
仕事一筋で、離婚以来、色恋沙汰とは無縁の生活を送ってきたエリカを演じているのは、『赤ちゃんは~』でも主演していたダイアン・キートン。気が強くて、一生懸命なんだけど、どこか抜けている、可愛げのある女性の役が本当に似合う女優さんである。本作の撮影時には50代も後半だったと思われるが、まだまだキュートな魅力も十分。まったく体型のくずれていないオールヌードも披露して、まさに体当たりの演技を見せている。
そんなダイアン・キートンを向こうにまわして大人の男の可愛げを滲ませまくっているのがハリーを演じるジャック・ニコルソン。結婚歴はなく、若い女ばかりをとっかえひっかえしている辣腕経営者ハリー。『愛と追憶の日々』(1983年)の元宇宙飛行士役しかり、『恋愛小説家』(1997年)の作家役しかり、偏屈でとっつきにくくなかなか本心を見せない、しかし心の奥の奥に寂しさと優しさを隠し持っている、そういう男を演じさせたらジャック・ニコルソンの右に出る俳優はいない。
禿げ上がった額に太鼓腹(1983年製作の『愛と追憶の日々』の時点ですでに立派な太鼓腹。いわんや本作においてをや)、そしてまごうかたなき悪人顔。堂々たるオヤジの風貌なのだが、映画がすすむにつれて、その悪人顔オヤジがチャーミングに見えてくるから不思議だ。
本作を見直してみて気づいたのだが、ジャック・ニコルソンはとにかく声がいい。低音のしわがれ気味の声なのだが、その声がとんでもなく二枚目なのだ。オヤジの風貌なのに(しつこい)、どんなにキザなセリフを吐いてもサマになってしまうのだ。
彼の魅力はもちろん声だけではない。ジュリアンとディナーに出かけるエリカの姿を見て、ハートを射抜かれたような顔をするハリー。海岸でピクニックの真似事をするシーンで、エリカを見るハリーの目の優しさ。こうした表情のひとつひとつにしっかり説得力が宿っているのは、むしろその悪人オヤジ顔のおかげなのかも。二枚目俳優が演じたら嫌味に見えかねないシーンを、男の哀愁とともに成立させてしまうジャック・ニコルソンのすごさよ。
キアヌにマクドーマンド。脇を固める俳優陣も贅沢このうえなし!
本作にはおまけ(と言っては失礼か)の見どころも少なくない。エリカの妹ゾーイを演じているのがあのフランシス・マクドーマンドなのだ。最初にアカデミー主演女優賞を受賞した『ファーゴ』(1996年)で演じた警察官、二度目の受賞となった『スリー・ビルボード』(2017年)の信念の母親、先頃三度目の受賞となった『ノマドランド』(2020年)のノマドワーカーと、ヘビーな役柄の印象が強いだけに、あれ、どっかで見た女優さんだなと、最初は誰かわからなかった。ちょっと前(2000年代初頭はちょっと前ですよね?)の映画をあらためて見返してみるといろんな発見があるものですね。
さらに、もともとエリカの芝居のファンで、本人に会って恋心を燃え上がらせる医師ジュリアンを演じているのがキアヌ・リーブス。実は見返すまでキアヌがこの作品に出ていたことはすっかり忘れていた(笑)。人気者ゆえのキャスティングだったのか、この作品に限っていえば、「キアヌでなくっちゃ」とまでは感じなかったけれど、アクションなしでイケメン医師を演じるキアヌは、それはそれでファンにはたまらないのかも。
サイドメニューもいろいろある本作だが、やはりいちばんの見どころは、ダイアン・キートンとジャック・ニコルソンの可愛げ対決だ。目指してそうなれるものではないけれど、本作のふたりのように、年齢を重ねてなお、可愛げのある、チャーミングな大人になりたいものよと思う。
心が老いないかぎりは、いくつになろうとも、新鮮な驚きとともに恋に向き合えるということを教えてくれる映画です。
怪優ジャック・ニコルソンが滲ませる優しさにグッとくる
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